プレスリリース

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公立大学法人 福島県立医科大学
平成31年3月15日

報道関係 各位

AMED研究事業
「自立性・持続性を持った病理診断支援システムを構築するための地域実証実験モデル」
による成果報告

日 時: 平成31年3月15日(木)11時~ ※約30分程度
会 場: 福島県庁本庁舎2階 県政記者室会見室
出席者: 一般社団法人日本病理学会 理事長 北川 昌伸
    一般社団法人日本病理学会 福島病理ネットワーク担当 倉田 盛人
    公立大学法人福島県立医科大学 病理病態診断学講座 教授 橋本 優子
発表内容:
 公立大学法人福島県立医科大学医学部病理病態診断学講座(主任教授 _橋本優子)は、日本病理学会(北川昌伸理事長)主体の研究開発事業「病理診断支援のための人工知能(病理診断支援AI)開発と統合的「AI医療画像知」の創出」(日本医療研究開発機構:AMEDの公募事業)のプロジェクトのひとつ「自立性・持続性を持った病理診断支援システムを構築するための地域実証実験モデル」プロジェクト【17lk1010022h0002】に参画しています。
 がん医療を安心して受けるためには、病理診断(※1)が必要不可欠です。日本病理学会では、深刻な病理医不足を解消するため、人工知能を利用して、地域で病理医の力を有効活用する仕組みづくりを進めています。このため、病理医不足が深刻な福島県の7病院で、「地域基盤・循環型病理診断相互支援型モデル」として病理診断ネットワーク構築を行い、病理診断支援とネットワークの自立性・持続性の実証が開始できることとなりました。
 同事業において、以下の二つの成果を得ることが出来ましたのでご報告いたします。この研究開発事業は日本病理学会が国立情報学研究所(NII)と共同して進めてきたプロジェクトで2021年3月までの継続が予定されていますが、この地域実証実験モデルが研究事業終了後も自立的に運用できるよう、そのシステムの確立に努めてまいります。

① 「福島県遠隔病理診断ネットワーク」の運用開始
② 胃生検のAI診断システム(人工知能を用いた病理診断システム)の①を用いた検証実験

①について
 福島県は、病理診断を行う専門の医師、病理医の不足が非常に深刻で、平成30年度の調査では人口10万人当たりの病理専門医数が全国ワースト2位の県となっています。また病理医の高齢化もすすみ、大量の診断業務を一人でこなす一人病理医の業務軽減、若い病理医への円滑な移譲が大きな課題でした。そこで、本事業として、県内の複数の医療機関が病理情報回線を連結し、各医療機関の病理医同士が互いに診断を支援し、病理医のいない病院でも、病理診断や術中迅速病理診断ができるネットワークの構築を進めてまいりました。そしてこの度、病理医不在病院を含む県内6つの医療機関(※2)と本学附属病院が連携した遠隔病理診断ネットワークを立ち上げし、一部の医療機関での運用ができるようになりました。

②について
 福島県遠隔病理診断ネットワークの病理診断支援によって得られた病理画像は、全国の本事業に参画する施設と同様にセキュリティの保たれた閉鎖型回線を使って日本病理学会のクラウドサーバーに集積されます。現在、日本病理学会では11 万件を超す病理画像データが収集されていますが、こういった情報をもとに昨年、胃生検の病理診断を補助するAI 診断システムが開発されました。
このたび、①のネットワークを用いて、同AI 診断システムの検証実験を行うことになりました。このシステムでは、遠隔地から胃生検の病理診断を行う際、AI のレポートを参照し、またそのAI の判断を評価し、AI エンジン開発グループにフィードバックする仕組みが整えられています。①のネットワーク上で、自動的なAI レポートの添付、参照、さらにアノテーション(病理医による注釈)を追加したフィードバックなど各システムが円滑に連動するか、また施設間で異なる標本の質や色味によるWSI やそれを利用するAI 診断への影響・補正などを実証しつつ、全国に先駆けて、胃生検の病理診断を補助するAI の有効性が確認できれば、広く全国に展開していく予定となっています。(※3)

●お問い合わせ先
公立大学法人 福島県立医科大学医学部 病理病態診断学講座
担当:橋本 優子
TEL:024-547-1165
〒960-1295 福島市光が丘1番地

一般社団法人 日本病理学会
JP-AID広報担当:酒井 康弘
〒113-0034 文京区湯島1-2-5 聖堂前ビル7階
ya-sakai@p-wsi.jp

※1 病理診断と病理医
 治療や診断のために、患者さんの体より採取された病変の組織や細胞から顕微鏡用のガラス標本が作られます。この標本を顕微鏡で観察して、病変を診断するのが「病理診断」です。この病理診断を専門とする医師が「病理医」です。適切な治療のために適切な診断が必要であり、「病理診断」は多くの疾患で最終診断として大きな役割を果たしています。

※2 福島県病理診断ネットワーク参加医療機関
① 公立大学法人福島県立医科大学附属病院
② 日本赤十字社 福島赤十字病院
③ 一般財団法人太田西ノ内病院
④ 公益財団法人星総合病院
⑤ 一般財団法人脳神経疾患研究所附属 総合南東北病院
⑥ 公立大学法人福島県立医科大学 会津医療センター
⑦ 一般財団法人竹田健康財団 竹田綜合病院

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※3

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