研究事業終了のご挨拶

日本病理学会理事長
北川昌伸

日本病理学会は、日本医療研究開発機構(AMED)のご支援の下、平成29年1月より研究事業として「AI等の利活用を見据えた病理組織デジタル画像(P-WSI)の収集基盤整備と病理支援システム開発」、平成30年10月より「病理診断支援のための人工知能(病理診断支援AI)開発と統合的『AI医療画像知』の創出」に取り組んで参りました。これらの事業はJapan Pathology Artificial Intelligence Diagnostics Project(JP-AID)と名付けられ、病理組織デジタル画像(Pathology-Whole Slide Image: P-WSI)のビッグデータを全国の研究参加施設より収集・集約し、10万症例を越える膨大なデータベースを構築しました。また国立情報学研究所(NII)と共同し、収集した病理組織デジタル画像を活用して様々な病理診断支援AIの開発を行って参りました。一部のAIは福島県と徳島県に設置した地域病理診断ネットワークで実装実験を行い、その有用性を確認しました。このほか、病理診断分野におけるAIや病理画像ビッグデータの利活用を見据え、病理AIガイドライン案を策定し、日本医療情報学会と共同で患者さんの同意に関する法制度や倫理面の課題抽出を行うなど、社会制度の側面からの課題にも取り組んで参りました。
本事業は令和3年7月末をもってAMEDの支援期間が終了し、また病理学会が主導する形での研究事業は令和3年3月末をもって終了することとなりました。無事に研究事業を完遂できたことに、研究参加者のみならず、患者さんを含めた全ての関係者の方々に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。

なお本事業で収集されたP-WSIデータベースは、後継事業である「広く研究利用可能な病理画像データベースの構築と公開」事業に引き継がれ、P-WSIビッグデータの有効活用を推進して参ります。また本事業で開発されたAIモデルの一部は、研究を分担した各大学に引き継がれ、医療機器としての実装化を含めた研究開発が今後も行われる予定です。今後とも皆様方のご指導、ご鞭撻を賜れれば幸いに存じます。

ご挨拶 平成28〜29年度

ご挨拶 平成30〜令和2年度

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