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令和7年8月1日
医育機関 カリキュラム作成担当者各位
日本病理学会 会員各位
一般社団法人日本病理学会
理事長 小田義直
教育委員会委員長 金井弥栄
日本病理学会教育委員会では「病理学卒前教育に関するアンケート」を実施し、コロナ前(2019年)からポストコロナ(2023年以降)における教育動向を明らかにしてまいりました。その中で、卒前教育における"病理学"ならびに"病理診断"教育のあり方が、各大学の状況により大きく異なってきていること、また、カリキュラム改定の影響を深刻にうけている大学があることが明らかになってまいりました。背景として、医学教育におけるstudent doctor制度の導入、臨床実習を重視するカリキュラム改定、ならびに昨今の医師国家試験、医学共用試験、モデル・コア・カリキュラムにおける"病理学"ならびに"病理診断"教育の位置づけが、必ずしも適切ではないことなどがあげられます。
日本病理学会教育委員会では、これらの現状を憂慮し、各大学におけるカリキュラム改定や、実際の教育に際しての留意事項として、以下の内容を提案いたします。
卒前教育における病理学教育のあり方に関する見解
卒前教育における病理学は、ヒトの病気の成り立ちを学ぶ「基礎と臨床の架け橋」となるコースであり、総論・各論と病理解剖症例検討(CPC)より構成される。
病理学総論は、疾病の原因および本質に関する一般原則を考究する。特に、病的状態に関するすべての医学用語ならびに疾病時の肉眼的・組織学的変化について学習する。そのため、病理学総論は医学教育の根幹であり、臨床医学を学ぶ際の病態理解や臨床推論の科学的基盤となっている。基礎医学科目の水平統合の方針にあっても、全身の組織・臓器の顕微鏡的観察を通じて病理学の本質を理解している病理専門医が、病理学総論の教育を担うべきである。
病理学各論は、総論だけでは学べない各臓器固有の疾患病態を学ぶ機会であり、病理専門医が系統的・俯瞰的に教育すべきである。臨床医学に傾倒した垂直統合の中に埋没され、科目としての病理学各論が廃止されることがあってはならない。
時間数削減が求められる傾向にあるが、アクティブラーニング等の方略上の工夫により、病理学総論・病理学各論の双方において病理専門医による教育機会を確保するべきである。
臨床実習 (ポリクリ)の水平統合を行うとしても、実践的な病理診断の現場をみせる時間を十分に取り、将来病理専門医を志す人材を確保する必要がある。実際のclinicopathological conference (CPC)に学部学生を参画させれば、病態の系統的理解を目指す病理学各論の総括となり、将来の剖検率低下に歯止めをかける効果も期待される。
以上