このページでは、Javascriptを使用しています
  • 日本病理学会について
  • 市民の皆さまへ
  • 専門医
  • 病理医への扉
  • 刊行物

HOME > 新着情報 > 医療機関に所属する病理学会会員の観察研究に関する個人情報保護法に対する懸念について


医療機関に所属する病理学会会員の観察研究に関する個人情報保護法に対する懸念について

令和4年6月21日
会員各位
一般社団法人日本病理学会 理事長 小田 義直
担当拡大常任理事 豊國 伸哉
倫理委員長    古川  徹

1) 医療機関において観察研究を行い、その結果を学会や論文などで発表する場合
「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(令和4年5月26日更新)のQ2-15において医療機関等が以前治療を行った患者の臨床症例を観察研究のために当該医療機関内で利用することについてのアセスメントが記載されており、患者本人の転居等により有効な連絡先を保有していない場合や、同意を取得するための時間的余裕や費用等に照らし、本人の同意を得ることにより当該研究の遂行に支障を及ぼすおそれがある場合は、公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときには、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人情報を当初の利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱うことが許容される(個人情報保護法第18条第3項第3号)という規定に基づき、本人の同意なしに個人情報を利用することが可能とされています。その際に、当該医療機関では観察研究を行う事について倫理審査委員会の関与、研究対象者が拒否できる機会の保障、研究結果の公表等について規定する医学系研究等に関する指針や、関係法令の遵守が求められます。なお、当該医療機関等においては、当初の利用目的及び当該研究のためという新たな利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該データを取り扱うことは原則できません。また、その結果を学会や論文などで発表する際は、患者に係る識別可能な情報(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)を消去し、個人を識別できない状態にすることで「個人情報」に該当しないことから、個人情報保護法にある第三者への個人情報提供には当たらないと考えられます。研究発表に際しては関連指針・ガイドラインを遵守することが求められます。

2) 医療機関が個人データを観察研究のため他の医療機関(学術研究機関等に該当しない)に提供する場合
「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(令和4年5月26日更新) のQ7-24において医療機関等が以前治療を行った患者の臨床症例を観察研究のために他の医療機関へ提供することについてのアセスメントが記載されており、患者本人の転居等により有効な連絡先を保有していない場合や、同意を取得するための時間的余裕や費用等に照らし、本人の同意を得ることにより当該研究の遂行に支障を及ぼすおそれがある場合は、公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときには、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人情報を当初の利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱うことが許容される(個人情報保護法第18条第3項第3号)という規定に基づき、本人の同意なしに提供することが可能とされています。その際に、提供元及び提供先の医療機関においては、観察研究を行うにあたっての倫理審査委員会の関与、研究対象者が拒否できる機会の保障、研究結果の公表等について規定する医学系研究等に関する指針や、関係法令の遵守が求められます。なお、当該医療機関等においては、当初の利用目的及び当該研究のためという新たな利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該データを取り扱うことは原則できません。

3) 医療機関が学術研究機関等に学術研究目的で個人情報を提供する場合
個人情報保護法第二十七条例外規定により本人の同意を得ないで提供することが可能です。提供元の医療機関及び提供先の学術研究機関等には、倫理審査委員会の関与、研究対象者が拒否できる機会の保障、研究結果の公表等について規定する医学系研究等に関する指針や、関係法令の遵守が求められます。

4) 学術研究機関等が医療機関に学術研究目的で個人情報を提供する場合
個人情報保護法第二十七条例外規定により、当該医療機関(個人情報取扱事業者)と当該学術研究機関等が共同して学術研究を行う場合に限り、本人の同意を得ないで提供することが可能です。提供元の学術研究機関等及び提供先の医療機関には、倫理審査委員会の関与、研究対象者が拒否できる機会の保障、研究結果の公表等について規定する医学系研究等に関する指針や、関係法令の遵守が求められます。

*以上、いずれの場合においても個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除く。(第7号関係)

参考資料
平成十五年法律第五十七号 個人情報の保護に関する法律(e-Gov)

個人情報保護委員会 「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(令和4年5月26日更新)

個人情報保護委員会 令和4年5月26日 「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&Aの更新

人を対象とする生命科学・医学系研究に関する 倫理指針 ガイダンス
令和3年4月 16 日 (令和4年6月6日一部改正)