2004年4月アーカイブ

2004年4月13日

4学会共同声明 診療行為に関連した患者死亡の届出について
~中立的専門機関の創設に向けて~

 

我が国における、いわゆる異状死の警察への届け出でについては、問題があることが各方面から指摘されており、本学会もその問題点を指摘してきました。昨年より、日本内科学会、日本外科学会、日本病理学会、日本法医学会がこの問題について協議をしてきた結果、このほど4学会でこの問題についての考え方で歩調をそろえることができ、先日共同声明を出しましたので、そ の要旨と本文を掲載いたします。なお本件は、本年6月の日本病理学会総会において、学会としての批准をお願いする予定です。

平成16年4月
(社)日本病理学会理事長 森  茂郎



診療行為に関連した患者死亡の届出について
~中立的専門機関の創設に向けて~


4学会共同声明要旨


 医療事故が社会問題化する中、医療の安全と信頼を向上させることが急務となっている。医療事故の発生・再発を予防するためには、事故原因の徹底的な解明とその対応策の確立が最も重要である。このためには、事故事例情報が医療機関等から詳細に提供されることが必要となってきており、厚生労働省は一定の医療事故情報を広く医療機関から日本医療機能評価機構内の第三者機関に報告させる制度を創設し、本年4月からスタートする。

 医療の信頼性向上のためには、患者やその家族に対する充分な情報提供を行ない、医療の透明性を高めることが重要であり、医療事故が発生した際に、患者やその家族(遺族)が事実経過を検証し、公正な情報を得る手段が担保されることが必要である。そのため医療機関から医療事故の届出を受けて、専門的知識を持つ第三者が医療内容を分析・検討し、患者や家族を含む当事者に報告する制度が求められる。一方、診療行為に関連して患者が死亡した場合、どのような事例を医師法第21条に基づき異状死として所轄警察署に届出なければならないかについて、現在明確な基準がなく、各学会が独自に指針を示すなど、臨床現場において混乱を招いてきた。

 そのため、日本内科学会・日本外科学会・日本病理学会・日本法医学会の4学会は共同で検討を重ね、厚生労働省・日本医師会・日本医療機能評価機構にもご意見を伺い、このたび別紙のとおり共同声明を公表することとした。  

 この声明では、医療の安全と信頼向上のために医療事故の届出を受けて、死体解剖を含めた諸々の分析方法を駆使し、診療経過を全般にわたり検証する第三者から成る中立的専門機関の構築を提起する。患者の死亡に診療行為が関連した可能性があるすべての場合について、このような中立的専門機関に届出を行なう制度を可及的速やかに確立したい。

 われわれ4学会はすでに医療事故の届出制度と中立的専門機関の創設に向けてワーキンググループを組織し、検討を始めている。今後、管轄省庁・地方自治体担当部局・他医療関連団体・学術団体などと連携して、この問題に取り組んでいく所存である。




診療行為に関連した患者死亡の届出について
~中立的専門機関の創設に向けて~


 医療事故が社会問題化する中、医療の安全と信頼の向上を図るための社会的システムの構築が、重要な課題として求められている。医療安全対策においては、事故の発生予防・再発防止が最大の目的であり、事故の原因を分析し、適切な対応方策を立て、それを各医療機関・医療従事者に周知徹底していくことが最も重要である。このためには、事故事例情報が医療機関等から幅広く提供されることが必要である。

 また、医療の信頼性向上のためには、事故が発生したときに、患者やその家族のみならず、社会に対しても十分な情報提供を図り、医療の透明性を高めることが重要である。そのためには、患者やその家族(遺族)が事実経過を検証し、公正な情報を得る手段が担保されることが必要である。

 このような観点から、医療事故に関して何らかの届出制度が必要であると考えられる。ただ、どのような事例を誰が、何時、何に基づいて、何処へ届ける制度が望ましいかなどについては多様な考え方があり、日本内科学会・日本外科学会・日本病理学会・日本法医学会の4学会は、共同でこの問題について検討を重ねてきた。

 とくに、診療行為に関連して患者死亡が発生した場合、どのような事例を異状死として所轄警察署に届出なければならないかを検討してきた。この問題については明確な基準がなく、臨床現場において混乱を招いているが、少なくとも判断に医学的専門性をとくに必要としない明らかに誤った医療行為や、管理上の問題により患者が死亡したことが明らかであるもの、また強く疑われる事例を警察署に届出るべきであるという点で、一致した見解に至っている。

 さて医療の過程においては、予期しない患者死亡が発生し、死因が不明であるという場合が少なからず起こる。このような場合死体解剖が行なわれ、解剖所見が得られていることが求められ、事実経過や死因の科学的で公正な検証と分析に役立つと考えられる。また、診療行為に関連して患者死亡が発生した事例では、遺族が診断名や診療行為の適切性に疑念をいだく場合も考えられる。この際にも、死体解剖による検証が行われていることが、医療従事者と遺族が事実認識を共通にし、迅速かつ適切に対応していくために重要と考えられる。

 したがって、医療の過程において予期しない患者死亡が発生した場合や、診療行為に関連して患者死亡が発生した場合に、何らかの届出が行われ、死体解剖が行われる制度があることが望ましいと考える。しかし、医療従事者の守秘義務、医療における過誤の判断の専門性、高度の信頼関係に基礎をおく医師患者関係の特質などを考慮すると、届出制度を統括するのは、犯罪の取扱いを主たる業務とする警察・検察機関ではなく、第三者から構成される中立的専門機関が相応しいと考えられる。このような機関は、死体解剖を含めた諸々の分析方法を駆使し、診療経過の全般にわたり検証する機能を備えた機関であることが必要である。また、届出事例に関する医療従事者の処分、義務的な届出を怠った場合の制裁のあり方、事故情報の公開のあり方などについても今後検討する必要がある。

 以上により、医療の安全と信頼の向上のためには、予期しない患者死亡が発生した場合や、診療行為に関連して患者死亡が発生したすべての場合について、中立的専門機関に届出を行なう制度を可及的速やかに確立すべきである。われわれ4学会は、管轄省庁、地方自治体の担当部局、学術団体、他の医療関連団体などと連携し、在るべき医療事故届出制度と中立的専門機関の創設を速やかに実現するため結集して努力する決意である。

平成16年2月6日
社団法人日本内科学会
理事長 藤田 敏郎

社団法人日本外科学会
会長 松田 暉

社団法人日本病理学会
理事長 森 茂郎

日本法医学会
理事長 勝又 義直


2004年4月 5日

日本病理学会の財務状況に対する評価・提言

理事会では今後の本学会の健全な運営をめざし、会務の点検の一環として、現在の財務状況に関する監事の意見をもとめ ておりました。先ごろ、両監事より以下の答申をいただきましたので、今後の運営の参考にさせていただきます。この答申は理事会内のみではなく広く会員の皆 様にもお示しし、御意見があればいただき、よりよい道を探りたいとかんがえております。

           2004年3月   財務委員会委員長 坂本穆彦


平成16年02月23日

(社)日本病理学会
 理事長     森 茂郎殿
財務担当理事 坂本穆彦殿

(社)日本病理学会の財務状況に対する評価・提言

 平成14-15年度 監事   松原   修
向井 萬起男


    はじめに

  平成15年05月22日付けの「現行の学会財務の評価について(依頼)」のお手紙を頂き、我々は事務局での財務状況の説明を受け、慎重に調査した。我々の評価・提言を、ここにまとめましたのでご報告する。

    評価・提言内容

1.現在おこなわれている諸事業の適格性、それに使用される経費使用の妥当性の判断

(支出総額)
  収入に見合った支出総額でなければならず、収入に見合った事業計画、人件費を含めた管理費の予算執行でなければならない。収支決算書をみると、出版関 係と管理費が大半を占めており、新しい事業をおこすなどということは無理とみられる。(社)日本病理学会の会員数が約4,000人の規模に見合った事業・ 支出総額がどの程度であるかの判断は難しいが、同程度の規模の学会と本学会の比較調査も行ったので、この比較も後述する。

(出版関係)
  学会誌発行経費が4,000万円弱を占めており、これは異常なる高額支出の最大の原因である。学会誌としての「Pathology International」は発行経費の年次別推移をみても、評価が高まる傾向があり、経費は減少しており、コストパーフォマンスは健全であると言え る。年2回の発行の日病会誌の経費が1,000万円以上であるのは、コストパーフォマンスの上から問題があるのではないかと指摘したい。病理専門医部会の 学術誌「診断病理」については、病理専門医の会費合計が高くなるという不満の声があるので、その存在意義について再度検討した方が良いであろう。

(支部に対する補助金)
  日常の病理業務において深い関わりをもつのが支部活動であり、各支部活動を盛り上げ、またそれぞれの支部が行う各種の学術集会への補助を増やしていくことが望ましい。

(病理専門医資格更新のための生涯学習基準と単位)
  病理専門医資格更新のための生涯学習基準と単位が定まっているが、その実態は広く知られていないものが多い。定期的に見直したり、実態の調査、一般会員への広報(学術集会名、日時、プログラム、会費など)といった改善が望ましい。

(国際交流活動)
  先進国病理学会との交流、学会員の国際派遣などを行っているが、アジア・アフリカなどの若い病理学者を積極的に受け入れる事業も考えることが望ましい。

(後継者育成事業)
  将来の病理専門医・病理学者をどのように発掘、育成していくか、積極的な事業が望ましい。

(医学部学生対策)
  将来の病理専門医・病理学者の育成のため、医学部学生の段階からアプローチする事業が望まれる。

(社会への活動)
  社会において、病理専門医・病理学者の活動が認識されることが少ない。この啓蒙活動がより一層望まれる。

2.管理費として使用される経費の使途と金額の適格性の判断

(管理費・人件費)
  大学の病理学教室から離れて別個のところ事務所を設け、事務局を維持するために管理費総額が約3,400万円を占めており、中でも人件費が約 2,000万円弱占めている。社団法人化し、また本学会がより活性化している状況の中で、経費がかかるのはやむを得ないことと判断する。会議や打ち合わせ などがインターネットで行われるようになると、より経費のかからない場所へ事務局を移動することも一考に値するのではないだろうか。

3.経費削減のための勧告

(各種の会議費)
  各種の委員会などへの会議について、顔をつき合わせて話し合うのが本当であるが、各委員が全国にわたり、日程調整の難航や交通費がかさむことを考えると、インターネット、メールでの会議開催で省エネをはかるのが望ましい。

4.増収のための勧告

(認定病院の認定、登録施設の登録)
  認定病院の認定、登録施設の登録にあたって、各病院、施設から幾分の費用を徴収してもいいのではないか。

(賛助会員の拡大)
  賛助会員が現在5社と少ない。拡大が望まれる。

5.会費値下げの可能性に関する意見

(会費)
  正会員、特に学術評議員の年会費が20,000円であることは、国内学会と比較しても大変高額である。その上、多くの会員(約1,800人)が病理専 門医部会員の会費も払わなければならないことも考え合わせると、下げることが望ましいのではあるが、現状をみると会費の値下げを行うことは無理であると判 断する。

(病理専門医会計)
  病理専門医資格更新のためには、各種の学術集会へ参加し、それなりの費用負担をしないと単位修得ができない仕組みになっているのに、更新の手続きの費用をさらに徴収しているのは二重に負担を強いている。病理専門医資格更新の費用は減額するのが望ましい。

(病理専門医部会会計)
  病理専門医部会は約1,700名の会員から6,000円を徴収して収入が約1,400万円、支出の殆どが「診断病理」刊行経費で約700万円である。 「診断病理」の刊行を続けても会費は半分でよいと考えられ、また刊行を止めれば特別に病理専門医部会の会費を徴収する必要はないと考える。

6.他の学会との財務状況の比較検討

 病理学会と他の4学会の平成14年度の財務状況を比較した。学術集会の参加費が高く、特別会計にする学会もあるので、これを除いた収支をもとに比較した。
 病理学会が会員数に比較して、1)年会費が高いこと、2)会費収入が多いこと(会費納入率も高い)、3)収入合計が多いこと(補助金収入も多い)4)管理費の占める割合が高いこと、という特長が示された。

7.その他

(固定資産)
  固定資産として、病理学学術医療振興基金約1億円、病理学国際交流基金約2,000万円がある。こういう特別財産の使途について考えなければならな い。平成15年度の新規事業をみてもその合計は250万円でしかない。現状であれば、新規事業はまず無理としか言えないが、本学会の益々の発展のためには 必要である。新規事業については、病理学学術医療振興基金約1億円から少しずつ捻出することを考えてみてはどうかと提言する。


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