2007年10月アーカイブ

2007年10月30日

(社)日本病理学会教育委員会主催、第9回教育ワークショップ報告

(2007年9月23日(日)、藤田保健衛生大学生涯教育研修センターにて開催、参加者20名)


教育委員会委員長 堤 寛

(社)日本病理学会教育委員会では、上記日程、場所において第9回教育ワークショップを開催し、"これからの病理学教育"に関して、卒前教育を中心に議論した。その成果として、以下の報告書をまとめた。
これからの病理学の卒前教育として現時点で必須な事項として、以下の2項目が指摘された。さらに、これを踏まえた新しい教育モデルをまとめた。

1. 基本事項

(1) 標榜科時代の病理学(病理診断学)教育
2007年9月21日、厚生労働省医道審議会において、来年度より病理診断科が標榜科として承認された。今後政令・省令として整備されてゆく予定である。 これに伴い、医療における病理診断の意義について理解することを基本として、病理診断が患者に与える影響・重要性を学生に正しく伝える必要性が再認識され る。したがって、手術組織、術中迅速、生検、細胞診を対象とする正確な病理診断がその後の医療(治療)の基本となる点に関して、症例検討を通じて学生に理 解してもらう側面がより強化されねばならない。

(2) モデル・コア・カリキュラムの弱点を補う教育
モデル・コア・カリキュラムの実施によって臓器別、疾患別の視点が強化された結果、疾患の全身に及ぼす影響の理解や系統的に病態を理解する能力の育成が不 十分となっている傾向がある。これを補う意味で、病理解剖例を利用して臨床病理カンファレンス(CPC)を行うことは、全身的な病態生理を横断的に理解す る統合型学習として最適である。加えて、病理学のもつmedical audit(医療監視)としての役割の理解にも役立つ。



2. 病理学教育モデル

病理学は全学年を通じて学生に接する数少ない科目といえるため、以下のような経年的な教育モデルを構築できる。

1年次:
Early Exposure(選択)
・ 病理診断学の実務を見学する
・ 病理医の存在を知り、その役割(診断、解剖、研究)を理解する

2~3年次:
基礎医学・病態学(必修)
i) 病理学総論(病因論、病態の把握):
・ 病因論を理解する。
・ テュートリアル形式の学習で、病因と病態の関連を学ぶ
ii) 病理学各論(疾患の基礎):
・ 肉眼所見と画像診断の関連、病理診断学の重要性を学ぶ
・ 手術・生検症例を用いたテュートリアル学習で、代表疾患の病態を学ぶ

4年次:
統合型臨床講義(必修)
・ 臨床医学における病理学的な病態解析を学ぶ
・ 手術組織、術中迅速、生検、細胞診を対象とする病理診断学の有用性を理解する
症例検討(CPC形式:必修)
・ 病理解剖例を通じて、全身の病態解析を学び、病理解剖の意義を理解する

2~4年次:
教室配属(研究室研修:選択)
 ・病理学的研究、症例研究の面白さに触れる

5年次:
臨床実習(必修)
 ・病理診断の実際を体験する
実習内容:検体受付、検体の取り扱い、外科材料の切出し、代表的な染色法とその意義、標本作製、病理診断報告書の作成と意義、術中迅速診断の意義と限界、 臨床医とのコミュニケーション、臨床とのカンファレンス、病理解剖の意義と役割、病理診断における医療安全・バイオハザード対策など
重点目標:肉眼所見の重要性を知る(画像診断との連携が必要)

6年次:
1. 特別臨床実習(選択)
・ 標榜科としての病理診断科の実務をより深く理解する
2. まとめ講義(必修)
・ 病態を全身的・統合的に理解する
・ 疾患の病理学的な考え方を総復習する
・ 病理画像の読み方を整理する



ワークショップ参加者

稲留征典(筑波大学大学院人間総合科学研究科診断病理)
茅野秀一(埼玉医科大学病理学)
近藤福雄(帝京大学医学部病理学)
宇於崎宏(東京大学医学部附属病院病理部)
澤田達男(東京女子医科大学第1病理学)
稲田健一(藤田保健衛生大学医学部第1病理学)
小谷泰一(京都大学医学部附属病院病理診断部)
筑後孝章(近畿大学医学部病理学)
荻野哲也(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病態探求医学)
梅村しのぶ(東海大学医学部病態診断系病理診断学)
*堤 寬(藤田保健衛生大学医学部第1病理学)
*井内康輝(広島大学大学院病態情報医科学)
*羽場礼次(香川大学医学部附属病院病理部)
*田村浩一(東京逓信病院病理科)
*鬼島宏(弘前大学医学部第2病理学)
*伊藤浩史(福井大学医学部腫瘍病理学)
*下正宗(東葛病院病理部)
$松井俊和(藤田保健衛生大学医学部臨床医学総論、教育企画室長)
#黒田誠(藤田保健衛生大学病理部Ⅰ)
#長村義之(東海大学医学部病態診断系病理診断学)

(*:教育委員、$:基調講演者、#日本病理学会常任理事)

2007年10月15日

次期理事長選出の選挙について

平成19年10月10日
社団法人日本病理学会
選挙管理委員長森 茂郎

平成20/21年度次期役員(理事・監事)選挙の結果を踏まえ、次期理事長を選挙により選出いたします。下記の要領により投票をお願いいたします。



◯ 投票締切日:平成19年10月31日(水)当日消印有効
◯ 投票用紙には、被選挙人名簿の中から1名を記載ください。
所信表明(希望者のみ)をご参照ください。
なお、被選挙人の資格には、この所信表明の有無は問いません。
◯記載された投票用紙は、内封筒に入れてください。
内封筒にはのり付けをしないよう、お願いいたします。
◯ 外封筒には、投票者の所属、氏名および会員番号を明記してください。この記載がない場合は、無効となりますのでご注意ください。
◯ 封筒には投票用紙以外は同封しないでください。
◯ 切手は貼らずにお出しください。


(1)被選挙人名簿(記載はABC順)

青笹 克之
深山 正久
井内 康輝
覚道 健一
黒田 誠
真鍋 俊明
松原 修
本山 悌一
向井 清
根本 則道
岡田 保典
長村 義之
坂本 穆彦
佐藤 昇志
白石 泰三
居石 克夫
寺田 信行
上田 真喜子
山口 朗

(2)次期理事長候補者所信表明(希望者のみ掲載:希望者は1名でした)

長村義之(東海大学医学部病理診断学)
この度、日本病理学会理事に選出していただきました。私は、現在取り組んでおります多くの課題の解決のため、二期目の理事長を目指して立候補いたします。診療標榜科、診療報酬などにおいて病理学会の認知度は高まってきておりますが、病理医が働きやすい環境を実現するためには、更なる多方面への対外的な活動が重要です。また、研究活動の更なる賦活化および卒前教育・卒後臨床研修における病理学の確立など、研究・教育にも気配りの出来たバランスよい学会運営を目指します。これら診療・研究・教育は、いずれも若手病理医のリクルートに繋がる「我々の魅力」として極めて重要です。法人化して9年目を迎えましたが、病理学会の効率の良い運営を目指した機構改革も、会員の皆様のご意見を取り入れながら実現に向けた議論が必要と思います。私は理事長として、2011年に100周年を迎える日本病理学会が更に活力を高めるべく諸課題に取り組む所存です。

2007年10月 2日

病理専門医資格の更新について

病理専門医資格の更新について

日本病理学会病理専門医資格更新の本年度該当者には,学会事務局より必要書類が送付さます(10月1日までに発送済み)。
本年度該当者は,第5回(1983年)認定登録者ならびに第5回(1987年),第10回(1992年),第15回(1997年),第20回(2002年)試験合格者になります。
また,上記以外で更新の手続きが遅れていた方で,本年度に更新申請を希望される方は,事務局までご連絡下さい。必要書類を送付いたします。
資格更新希望者は,平成19年10月31日までに所定の手続をおとりください。


口腔病理専門医資格の更新について

日本病理学会口腔病理専門医資格更新の本年度該当者には,学会事務局より必要書類が送付されます(10月1日までに発送済み)。
本年度該当者は,第5回(1983年)認定登録者ならびに第5回(1987年),第10回(19912年)試験合格者になります。
また,上記以外で更新の手続きが遅れていた方で,本年度に更新申請を希望される方は,事務局までご連絡下さい。必要書類を送付いたします。
資格更新希望者は,平成19年10月31日までに所定の手続をおとりください。

診療標榜科目としての病理診断科

(社)日本病理学会 理事長 長村義之

厚生労働省、医道審議会標榜部会において、2007年9月21日、「病理診断科」の標榜が承認されました。永年の要望であった病理診断科の標榜が実現した ことは、多くの先輩の方々、会員皆様方のご尽力の結果であり、心より感謝申し上げるとともに、この喜びを分かち合いたいと思います。
また、この間における行政、医道審議会におかれましては、市民・患者のための医療の質の向上、担保という観点から卓越した見識を示され,深く敬意を表するものであります。
今後の予定としまして、来年4月に向けて、政令で標榜科名が包括的に整理され、省令によって個別の標榜をすることになります。すなわち、今回の決定によ り、内科、外科など大きな診療領域に臓器名、疾患名、症状名などを付記して標榜することが可能となりました。また,内科、外科の括りには入らない診療科、 すなわち小児科、産婦人科など省令に掲げられた科も標榜可能となりました。その中に、新しい科として、救急科、病理診断科、臨床検査科が含まれています。
このように今後、病理診断科単独で標榜が可能となることによって、我々の病理診断業務の医療、社会に果たす責任がこれまで以上に明らかとなり、かつ増して ゆくものと考えます。このような状況に伴って、今後学会がどのように対処してゆくのか、病理医個人としての活動がどのように変わって行くのか、また医療に おける位置づけ、役割がどのように展開してゆくのかなど、国の施策と歩調を合わせながら、慎重かつ適切に行動していく必要があります。会員、病理専門医の 皆様に於かれましては、様々なご意見をお寄せいただき、ともに標榜科としての発展を図っていこうではありませんか。
学会では、標榜科に関する今後の進捗状況について、種々の媒体を通じて病理専門医部会ならびに会員の皆様にご案内して行く所存です。因みに、来年の5月 15日~17日に金沢で開催される第97回日本病理学会では、ワークショップ「病理業務/診療科としての病理診断科」が企画され、病理診断科標榜に焦点を 絞って議論される予定で、現在その準備が進行中であります。

以上、診療標榜科としての病理診断科の現状と病理学会としての今後の対応などにつきご案内いたしました。

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