2016年9月アーカイブ

2016年9月16日

平成28・29年度日本病理学会に向けて ―これまでの活動と今後の抱負―


理事長 深山正久 2016年8月


私は日本病理学会理事長として、「後継者のリクルート・育成」を第一の目標に、学会員の皆様と共に、熱意をもって学会活動に取り組んできました。この間、医学・医療における病理学の立ち位置は、後方から前面へと大きく変わってきたと確信しています。この成果は、常任理事、理事、各種委員会委員、学術評議員、会員の皆さんのご努力に支えられたものであり、心より感謝申し上げます。
「創造性ある基礎・臨床研究の旗手としての病理学」、「先進的で安全な医療の守護者としての病理学」は我々の目標であり、同時に国民の期待でもあります。この目標を実現するため、学会活動を発展させ、若く意欲的な後継者をより多く育成しようと決意を新たにしています。病理学の未来は豊かな人材にかかっている、という切実な思いを胸に、「我が国に必要な病理専門医数3000人」を実現するための着実な基盤をつくり、次世代にバトンをつなぎたいと思います。


【病理学をとり巻く最近の情勢】
1.若手医師をめぐる状況:
新たな専門医制度に向けて、全国115の専門医研修プログラムが作成された。平成29年度は学会主導で専門研修を実施することとし、プログラムを学会ホームページ上で公開した。研修プログラムに関して、3年の研修期間、30例の病理解剖症例経験、2症例のCPC提示など、基本的な専門医受験資格条件を作成した。専門医研修の支援策として、剖検症例講習会の実施、ハンガリーでの病理解剖研修ならびに法医解剖症例の受験資格条件への適用拡大、病理専門医研修登録、研修手帳と「診断病理」の無料配布など、体制整備を進めてきた。
今後さらに、若手専門医を支援するための生涯教育の一層の充実、病理情報ネットワークの活用、男女共同参画の推進を図っていきたい。

2.基礎・臨床研究をめぐる状況:
日本医学研究機構(AMED)が設立され、医療分野の研究開発が一体的に行われるようになった。また、オーダーメイド医療・ゲノム医療、再生医療の推進が基礎医学、臨床医学の双方で重要課題となっている。病理学会では平成26年に、文部科学省、AMEDからの委託事業として「ゲノム研究用病理組織検体取扱い規程」を策定し、貴重な病理組織検体を医学研究において活用する基盤形成に取り組んでいる。
 医学生、若手医師の病理学研究への参加を促す施策として、学生ポスター、病理学会カンファレンス、病理診断サマーフェストなどの開催、レジナビでの展示、パンフレット「目指せ、病理医!」発行などの取り組みを進めている。また100周年記念事業病理学会研究新人賞を設け、研究に取り組む若手病理医、研究者を顕彰している。
先端的研究を支えるためにも、病気に関する過去のデータとそれに関する病理資料の集積、整理がますます必要となっている。病理学会では剖検輯報としての蓄積を基に、NCD(National Clinical Database)と協力してデータベース化する事業に着手している。

3.病理診断をめぐる状況:
「国民のためのよりよい病理診断に向けた行動指針2015」を公表し、「病理診断を国民に確実、安全に提供する」という病理学会の姿勢が診療報酬に適切に反映されるよう努力してきた。平成28年度診療報酬改定では、組織診断料の増額とともに保険医療機関間連携の条件緩和が行われた。「病理医による診断、病理診断」への理解が広がっていることを背景に、病理診断科診療所の開業が可能になり、「すべての病理診断を医療機関で行う」ための環境が整備された。これらは病理医のキャリアパス多様化につながり、病理医への門戸を広げる効果も期待できる。
 「責任ある病理診断」のため、胃癌および乳癌HER2のガイドラインを策定した。デジタルパソロジー技術を活用した遠隔病理診断が重要な課題となっており、デジタルパソロジー委員会を設けてそのガイドライン作成に着手している。また、各臓器の癌取り扱い規約における用語統一を提唱した結果、癌治療学会の中に委員会が設置され、用語統一に向け協力的に動き出している。

4.安全な医療のために:
第6次医療法改正によって、診療関連死(医療事故)に関し、院内調査結果を第三者機関(医療事故調査・支援センター)へ報告することが義務付けられることになった。日本医療安全機構が第三者機関として指定され、平成27年10月より報告制度がスタートした。病理学会では「病理解剖の必要性のアピール」を発表するとともに、「医療調査のための解剖には病理専門医による解剖が望ましい」ことを提言し、この制度の運用状況を見守っている。
 このほか、日本病理精度保証機構の設立に尽力した。病理検体取り違えを防止するため、病理検体取扱いマニュアルの策定し公表した。また日本臨床検査技師会に協力し、認定病理検査技師制度を設立するとともに、試験の問題作成・実施への委員派遣を行っている。

平成28・29年度の課題と抱負
1)専門医育成、生涯教育の充実、男女共同参画推進:新たな専門医制度に対応した専門医研修システムを構築し、専門医の生涯学習への支援を充実させます。病理研修医登録制度は着実に定着し、登録者数は現在、医科450名、口腔50名を超えています。今後は特に病理解剖技術、評価力向上に力を入れます。また、男女共同参画のための事業を発展的に推進します。
2)創造性ある基礎・臨床研究の旗手として:日本医学研究機構(AMED)から「ゲノム研究のための病理組織検体取扱い規定」策定事業を受託しています。この事業を成功させ、病理学会の先導的役割を明確にします。ゲノム病理の取り組みなど、学術活動の活性化、国際化を推進します。
3)先進的で安全な医療の守護者として:「国民のためのよりよい病理診断に向けた行動指針」を示し、病理学会として「医療における病理学」の実践に取り組んでいることを表明してきました。今後もこの行動指針に沿って、医療機関での病理診断体制を確実に充実させ、遠隔病理診断ならびに病理開業可能な環境の整備に取り組みます。とくに後者の課題には保険診療機関間連携の規制緩和が必須であり、内保連と連携して取り組みます。
4)病理診断科基盤の拡充:「国民のためのよりよい病理診断」の実践として、病理領域ガイドライン作成、がん診療提供のための用語統一、コンサルテーション・精度管理体制の充実、認定病理検査技師制度を進めます。NCD(National Clinical Database)と協力し、病理解剖症例のオンライン登録、データベース活用を推進します。
5) 医学生、研修医に対する積極的取り組み:コアカリキュラムにおける病理学関連項目の増加を図り、夏の学校、病理学会カンファランス、診断サマーフェストなど、病理学の魅力を届ける取り組みを進めます。
6)学術、支部活動支援をはじめとした情報基盤整備:学会IT化による情報共有、病理情報ネットワーク(PIN)センターの活用を進めます。とくに生涯教育でのPINセンター利用を進めます。

2016年9月14日

第63回(平成29年度)日本病理学会秋期特別総会における病理診断特別講演(旧:診断シリーズ)担当候補者の推薦 期間延長について

平成29年度より「診断シリーズ」を新たに「病理診断特別講演」と位置づけ、その担当者には「病理診断学賞」を授与することとなりました。(平成28年3月理事会決定)。
 これに伴い、平成29年度のこの病理診断特別講演担当者の推薦受付を行って参りましたが、この度その推薦受付を9月末まで延長することとなりました。自薦他薦は問いませんので、各学術評議員におかれては、改めてご推薦につきご検討をいただき、下記要領に従いご応募下さい。多くのご推薦をお待ちしております。
 
病理診断特別講演とは:
「病理診断特別講演」は、特定の疾患や臓器における病理診断に関して、本学会に永年にわたって貢献し、その専門に卓越した経験と見識をもつ本学会員が担当し、担当疾患の病理診断に関して主として解説的に講演する。「病理診断特別講演」担当者には、「病理診断学賞」が授与される。

募集人数:
2名

推薦者:
推薦者は、学術評議員であること。自薦も可とします。他薦では被推薦者の内諾を要します。

推薦書式:
1)下記よりダウンロードした所定の推薦書式に推薦者名、候補者名、略歴、活動・功績、課題名、推薦/申請理由(1000字以内)等を記載したもの。
※書式はWord形式です。全体が適切な形で2ページ以内に収まるよう配慮して下さい。
    自薦はこちら    他薦はこちら  
2)推薦理由に関する論文・著書業績(20編以内)のリスト   

提出先:一般社団法人日本病理学会事務局  〒113-0034 東京都文京区湯島1-2-5聖堂前ビル7階
    封筒に「病理診断特別講演推薦書式在中」と明記の上、書留等にてお送り下さい。

推薦締め切り:
平成28年9月末日(必着) 

選考:
担当者は平成28年秋の学術委員会において厳正・公明に選考し、同年11月の理事会審議にて決定、同総会にて発表いたします。
 
本件につきましてご質問がありましたら、日本病理学会事務局または学術委員長までお問い合せください。
日本病理学会事務局:TEL 03-6206-9070 FAX 03-6206-9077 jsp-admin@umin.ac.jp
学術委員長(髙橋雅英):TEL 052-744-2092 mtakaha@med.nagoya-u.ac.jp


参考:過去3年間の「診断シリーズ担当者」
平成28年度
横山 繁生(大分大学医学部 診断病理学 教授)
「皮膚扁平上皮癌と鑑別診断」

山口 岳彦(独協医科大学越谷病院 病理診断科 教授)
「椎骨関節疾患の病理」

平成27年度
白石 泰三(三重大学医学部腫瘍病理学 教授)
「前立腺針生検の病理診断」

手島 伸一(湘南鎌倉総合病院病理診断部 部長)
「卵巣腫瘍の病理 ─ 21 世紀に入って変貌した疾患概念」

平成26年度
山川 光徳(山形大学医学部病理診断学講座 教授)
「樹状細胞性病変の病理診断」

森谷 卓也(川崎医科大学病理学2 教授)
「乳管内増殖性病変の病理診断」

2016年9月13日

2016年秋に病理専門医資格更新申請を行う予定の病理専門医の先生方へ

2016年秋に病理専門医資格更新申請を行う予定の病理専門医の先生方へ


 専門医資格更新の準備が遅れており誠に申し訳ありません。この遅れは日本専門医機構が専門医資格更新に関する態度を明確にしないためであり、このため9月12日付で質問状を送り回答を待っております。

 つきましては申請書類の提出期限、資格審査、資格更新認定の予定をおよそ1ヶ月延期したいと考えます。ご迷惑をおかけいたしますが、資格更新には支障の無いようにいたします。諸事情に鑑み、何卒宜しくご了承いただけますようお願い申し上げます。

今後の更新手順予定の詳しい日程については、追ってご報告申し上げますので、今しばらくお待ちいただきたいと存じます。



平成28年9月

一般社団法人日本病理学会

理事長  深山 正久


2016年9月12日

すべての「病理診断」を「医療機関」で行うために保険医療機関間の連携による病理診断の活用を

一般社団法人日本病理学会からのメッセージ(PDF版はこちら

平成28年9月2日  日本病理学会 理事長 深山 正久

日本病理学会では、病理診断は病理医が行う医行為であることを明確にしてきました。平成元年には当時の厚生省から「病理診断は医行為である」との疑義照会回答が出され、平成20 年には「病理診断科」が診療標榜科として認められました。すなわち、医師が国民のために病理診断を担当し、責任ある「病理診断報告書」を作成することが明確になったと言えます。
 日本病理学会ではこれまで、「国民のためのよりよい病理診断に向けた行動指針2013」および「2015」において、「医行為である病理診断」を「すべて医療機関内」で行うことを宣言し、その実行を目指してきました。このたび、平成28年度診療報酬改定により「すべての病理診断を医療機関で行う」ための環境が整備されたことから、会員の皆様に、国民に病理診断を確実に提供する体制を推進するよう呼びかけるものです。

1.「保険医療機関間の連携による病理診断」の要件の見直しにより、「すべての病理診断を医療機関で行う」ための環境が整備されました。

「保険医療機関間の連携による病理診断(第13部病理診断 通則)」の改定(平成28年診療報酬改定)では、送付側・受取側医療機関の要件が以下のように変更されました(参照:特掲診療料の施設基準 第84の3)

① 送付側:衛生検査所に外注して作製した病理標本について、送付側医療機関から「病理診断科を標榜する医療機関」に病理診断を委託できるようになった
② 受取側:病理診断科を標榜する医療機関(病理診断科、診療所等)で、病理診断の受託が可能になった

今回の診療報酬改定で、衛生検査所では標本の作製を行うことが明確になり、そして病理診断は「医療機関」で行うことが現実に可能になりました。
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2.衛生検査所、大学講座における「病理検査報告」は、連携病理診断による「病理診断」に移行させる必要があります。

従来、大学講座、衛生検査所などで作製された病理標本について「病理学的検査報告書」が発行されてきました。連携病理診断に移行するまでの期間は新旧体制が混在することになります。日本病理学会は次のような行動目標を掲げ、学会全体として国民に責任ある病理診断体制の構築を推進します。

①登録衛生検査所に対して:
検査案内書等においては、「病理診断」という文言を盛り込まないよう、強く要望します。
また、検査報告書の助言に携わる病理医は、検査報告書に「病理診断」との表記をしないよう要望します。

②保険医療機関に対して:
連携病理診断を推進し、地域医療に貢献するため、病理診断科の人員の充実を要望します。



2016年9月 6日

英国派遣報告書

2016年6月28日から7月1日に英国ノッティンガムで開催された英国病理学会学術集会に参加した研究者から報告書が届きました。

>>シニア研究者派遣 八尾隆史学術評議員からの報告書(PDF形式)

>>ジュニア研究者派遣 下田将之(慶應義塾大学医学部病理学教室)からの報告書(PDF形式)

>>ジュニア研究者派遣 和田直樹(大阪大学大学院医学系研究科病態病理学)からの報告書(PDF形式)



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Quirke英国病理学会理事長たちと

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英国若手会員たちと

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